私は仕事上、オーダーキッチンの流し台や食器棚、カウンター下収納などを製作する機会が多く、設計士さんが描いた図面に沿って個人宅や病院、学校に店舗と様々な利用目的に応じた素材やサイズで作ります。
例えば…シンプルに病院の流し台
このようにキッチンを作る際に、いつも母が座って料理ができる流し台、自分のおひとり様老後のキッチンを考えながら作ることが増えました。
車いすや座ったまま家事ができるキッチンを考える
老後、自分で料理や洗い物ができるというのは自立した日常生活の一つにもなり、(もともと料理をしない、外食や宅配生活の人はさほど重要度を感じないとは思いますが。)母にも手のリハビリかねてなるべく調理をする機会を作っていました。
ただ、心配なのが手の麻痺による調理器具やまな板、鍋の落下によるやけどや切り傷や打撲などの怪我、火の消し忘れなどです。人によって注意すべき部分があるとは思いますが時間がかかってでも自分でできる限りはした方が良いとも考えています。
そこで母に対してキッチンで何が苦痛か聞いてみたら、長い間立っていると腰と足が痛いとのことでした。時間的には元気な時と変わりはありませんが体力や筋力、集中力の低下により疲れやすく立ちっぱなしがしんどくて料理や洗い物をするのがおっくうになるという悪循環に陥っています。
今の実家のキッチンの改修は考えていませんが、私が田舎でユニバーサルデザインの住宅が建築できた際には必ず車いすで室内移動と自分で作業ができるように考えていて、それは母のためでもありますが自分の老後の自立生活のためです。
- 流し台の下の収納部分はオープンにして椅子でも車いすでも足が入るようにする
- 拭き掃除しやすい素材の天板と扉を使用する
- 掃除しやすい床材にする(車いすでも邪魔にならない洗い替えマットの併用)
- 引き出しはプッシュオープンやダンパー式の金物を使う
- 座ったままでも水撥ねを防いで洗い物ができるシンクの高さと深さにする
- よく使う調理器具をスライド式の収納で取り出しやすく片付けやすい仕様にする
- 手すりを取り付ける
- 火は安全装置付きで災害時にも使えるように電気とガスどちらが良いか考え、場合によってはどちらかが使えないときに代用できるように準備をしておく
現在自分は立ったまま作業ができる健康体なのでシンクの高さが低いと調理がしにくいという問題があるので兼用できて高さ調整ができるものがあれば…と基本的には(母がいるので)車いすや椅子で使用することを想定した高さにしておき、強度を確保した上で、今の自分が快適に使える高さ、車いすになった時に自分の座高に必要な高さ調節できる仕様を考えています。
こうやってお客様のご依頼のキッチンを製作する仕事をしながら自分の老後の住宅の妄想をしています。