社会福祉施設の下足箱製作で考える取っ手の話

私の仕事はオーダー家具製作はじめ様々な家具を作る職人です。今、ちょうど手伝いの木工所にて製作中のオーダー家具が社会福祉施設の下足箱と壁面収納です。玄関ホールに3mを超える30名分の下足箱は扉付きで取っ手無しのプッシュオープンタイプ。

プッシュオープンタイプというのはその名の通り、扉を押すと開く、例を出すと昔よくあったテレビ台のガラス扉をぽちっと押すと磁石で引っ付いていた扉が飛び出して開くというものです。

このタイプのメリットは取っ手がないので家具の前を歩く際に衣服につまみなどの取っ手が引っかかることがなく安全であること、取っ手を掴む力がない人や手が使いづらい方にもひじなどで押して開けることができるので負荷が少ないことです。

また、凹凸がなくフラットなので見た目もすっきりします。

プッシュラッチ扉

しかし、そのすっきりしたフラットな扉が一部の人にとっては使いにくいというデメリットもあります。まず、どちらが吊元かわからずどこを押したら開くのかがわからない、何度教えてもらっても失認してしまう、探すためにベタベタ触るので汚れが目立つ、などです。

若くて健康で視力も記憶力もあれば問題ないのですが、高齢者や視覚に不安がある場合には使いづらくなってしまうのです。実際私の母も高次脳機能障害で失認があるのできっと何度も押し間違いをすると想像します。

かといって取っ手よりもプッシュオープンの方が使い勝手は良い、なので見た目が許されるのであれば綺麗にはがせるシールなどでプッシュする側に目印をつけておくと優しくなると思います。

続編↓写真解説

手指がうまく使えない障害・後遺症を持つ人が助かるプッシュオープン扉

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