インバウンドの影響でホテル不足が相次ぎ、中古物件を改装してインバウンド向けの宿泊施設にするケースやもともとあるホテルが外国人宿泊客が大半を占めることも増えましたね。
私は家具職人となってオーダー家具の製作でホテルの収納家具やデスク類を数々納品してきたことがありますが、基本的に不特定多数が使用するということで硬度が高く、防汚性、耐水性の高い材料が指定されます。これはインバウンドや国籍関係なく店舗やホテル、公共施設では当たり前のことなのですが
家の中の暮らしで想定できる当たり前の行動に合わせた仕様にしても、人によっては想定範囲外になることが多々あり、家具が壊れたりするトラブルもあります。
特に椅子、まず背も高く、体も大きい方々は体重が違うのと、ドカッと座ったり座りながら背もたれをギコギコさせて動く場合には椅子の強度が持たずぐらぐらすることもあります。テーブルにも全体重をかけて立ち上がる時にぐっと天板を押さえつけてテコの原理でシーソーみたいにテーブルがひっくり返ることもあります。
ですので脚物家具は強度とバランスを想定以上に考える方が想定外の事故を防げます。
また、扉付きの家具は開け閉めの方向がわからない取っ手の無いスタイリッシュな仕様になっていると、開ける方向を間違えて無理に吊元側をグイグイこじ開けたり、脚で蹴るように閉めたり、鍵付きの扉を力任せに鍵をひねって中で折れたり、鍵がかかった家具を無理やりこじ開けたり、鍵を紛失したことを隠して壊して黙っていることもあります。
その為、扉は老若男女、誰でも使い勝手がわかりやすいユニバーサルデザイにし、鍵もひねる時に折れにくい厚めの頑丈で開けやすい品質を選んだ方が壊れるリスクは軽減します。
また、海外の家具ではベタ芯が主なので、日本のフラッシュ家具の芯がないところを蹴ったりパンチしたり乗ったりスーツケースをドカッと当てたりすると化粧板が破壊します。ですから使用頻度が高い部位はフラッシュではなく、集成材やランバー、MDF、パーティクルボードのベタ芯を使用し、高度の高い表面材を使用するのが安心です。
あとは、扉や引き出しの開閉は金物を使って自動的にゆっくり閉まるソフトクローズ仕様にした方が騒音問題や衝撃による破壊やキズを軽減することにつながりますね。
設計士さんはもちろん知っていることですが個人オーナーさんでリノベーションしたり、家具屋さんに依頼するときや市販の家具を購入するときにご注意ください。銭湯のオーナーさんにロッカーや下駄箱のトラブルを聞くのも勉強になると思います。