家具職人になりたいと思った頃、様々な立場の人生の先輩から
- ご意見
- アドバイス
- 叱咤
- 陰口
- 励まし
を受けました。今回は老害と若者のはざまに立つ中年おばさんが思うことを記載します。
老害を見て老害を正す
家具職人になりたいと思っていたころは特に反対や怒られることが多かったのですが、職人としてデビューしてからは人付き合いも変化したからもあり、その道での助言をしてくださる方ができました。職人は守破離が大事とは言え、年配者の言うことも聞き流すこともありました。いまの言葉でいう老害だと思ったり避けていた節もありますがなんといっても若さゆえの根拠なき過信がそうさせたのでしょう。
若いときは年老いたときのことは想像できないのは当たり前
わかりやすい例でいうと老いに関する問題は全く想像できないので今になり、図面が読みにくい、メモリが読みにくい、腰が痛い腕が常にしびれている、耳が聞こえにくくなる、などこういうことかっと痛感しています(笑)
また技術が身についていない頃はずっと自分の技術向上・会社に迷惑をかけない自分になる為だけに仕事をしていました。使い手であるお客様の気持ちを考えるところまで至らず、目の前のことに必死でとにかく自分に自信を持ち胸を張って職人として技術を評価してもらって対価を受け取ることで頭がいっぱいでした。
根拠のない過信で自信のなさを埋めるために必死で仕事ばかりしていましたが周りへの配慮は大きく欠如していましたし、助言の本来の意味も理解できていませんでした。様々な失敗や痛みを知って先輩の言葉が響いたりありがたさに気づいたり反省したりしたのはもう30歳を越えてからです。
自分の価値観ではありますが、若い時には年配者の言うことは聞けないのは当たり前ではないかとさえ思います。体験する前に否定されても納得がいかないし抑えきれない自分なりの正義があり、それに対して必死で夢中になる気持ち、物怖じしないタフさなど、今は守りに入ってしまい経験が邪魔して頭で考えることも多くなった自分にとっては恥ずかしくも懐かしいです。
若者ことを否定したり見下さない
私は仕事に関係なくても年上というだけで偉そうにしたり、俺の若いころはこうだったと不幸自慢したり武勇伝を話しては、今の若いものはダメだとか甘いとか、非常識とかわがままとか否定をし、相手を想って助言するというよりは自分の話をしているだけの人がいるたびに不快な気持ちになります。
自分が若いときのこと忘れているんですよね、自分が年を重ねていくにつれて変わった価値観に気が付いておらず、年配者ならでは身についたこともあるはずなのに若いときから常識的だったように勘違いして若者を否定する人もいます。
私の場合、自分が若いころに否定されたり見下されたりしたことが多かった分、特に愛のない老害行為はしないように気を付けていると同時に、自分が若いときにどうだったか?と考えることを忘れないようにしています。私の学生時代の方が大人の言うこと聞かなかったし、年配者の話を聞いても耳に入らないことなんて沢山ありました。
知らないが故の強みや勢い、わからないから確かめるまで突き進む力、などはほほえましくも思いますしそれで頭を打っても否定や叱咤をするでもなく、そのあとどうするか?どう立ち直るか?を見守り、ニヤニヤとして時には手を貸してしまいます。(他人に苦痛や損失を与える迷惑行為や犯罪や違法行為は除く)
逆に若いからこそのリスペクトも持っていて、身内びいきに思えるかもしれませんが甥っ子や姪っ子世代に対しても今後の可能性を想うと知らないことから少しづつ経験を重ねる姿は素晴らしいな!っと尊敬しています。
歳を重ねて自分の価値観が変わっただけ・気力や体力に変化が起きただけなのに、これから経験を重ねていく若い人を批判する老害行為は成長の芽を摘む迷惑行為だと肝に銘じています。とはいえ、自分も気づかぬうちに老害行為をしてしまっているんだと思いますが意識しないともっとひどいことになっているでしょう。
年老いた人の感情は自分がならないとわからない
ただ、年配者が悪であり、排除したいという思想ではなく、歳を重ねないとわからないことはとても多く、あとから気が付くもので、小学校の先生が言っていたことが大人になって10年以上経過してからこういうことかとわかることもあるように、恩師の言葉は後から響くものだと思っていますからありがたい存在だと思います。
ただ、若いときの自分を棚に上げて自分が気に食わないから批判や注意、愚痴を言い、自分の今の価値観で今必要な快適だけを守り抜くために成長を妨害する年配者にはなりたくないということです。保育園の声がうるさいと苦情を言うという問題に近いかもしれません。
読んだ世代で新たに気づくリピート書籍
木のいのち木のこころ〈天・地・人〉 (新潮文庫 新潮文庫) [ 塩野米松 ]はおすすめの書籍で天は西岡棟梁の目線、地はそのお弟子さんで鵤工舎の創立者である小川三夫さんの目線、そして人は鵤工舎で宮大工の修業をしている職人さんの目線での言葉が記されています。
私は見習い時に読み始めたので、天と地は師匠に教えを乞うような気持ちで読みつつ、人の部分はとても共感することがあり、励みにもなりました。そして時を重ねて若い人に教える立場になったころに読んでみると、小川三夫さんの言葉がその当時とは違う気付きを得ることができ、さらにいうと、小川三夫さんの書籍不揃いの木を組む も世代により受け止め方が違い、歳を重ねるごとに読み応えがあります。