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家具職人になるために所構わず門を叩いては門前払いの私、周りを考えずにようやく門が開いて、引越しも終え、家具職人修業がスタートしました。

家具職人への道8~勉強・修業の門が開く~の続きです。

家具職人への道9~道具の手入れ漬けの日々~

座学は少し、実技が基本で作業場へ…まずは、家具職人として手道具を使えるようにならないといけないということで、第一カリキュラムは鉋の刃物研ぎです。

飲食店でバイトし続けてきましたが包丁すら研いだことの無い私。

始めは、砥石を真っ直ぐにすることからです。その理由は砥石が真っ直ぐじゃないと、刃先が真っ直ぐにならないからです。

こういうふうにやって、、、と師匠が実演。

ほうほう、、、と聞いてる分には納得するのですが、実際自分が手を動かしてするとなると、びっくりするほど安定しない

まず、刃物を持つことに、手が攣り、どうしても長時間研ぎをすると手首が下がって刃物が砥石とうまく接さず、集中力も切れて刃先が丸くなったり、右側だけが研げたり、とまあ、いびついびつ。

目安は師匠のひげがそれるようになるまで、そして、天井の蛍光灯が、刃物に反射しているラインが真っ直ぐピカッとなるように研げないと合格をもらえない。

※ヒゲ剃るって無理やろ?!と思いましたがうまく遂げるようになったとき、実際にヒゲがそれるので驚きました!私も自分の腕の毛を剃ってみました(笑)

私はこのときあまりも砥げなさすぎる鉋の刃先を観て、自分の歪んだ根性が全て出ていると痛感しました。

いつまで経っても合格をもらえず。

3ヶ月間、朝7時頃から夜は残れるだけずーっと研ぎ場で研いでいました。一枚の鉋の刃をすっと研いでいるので短くなってくるし、砥石も新しく買い足すくらいです。

私のように長くやるのが正解ではなく、他の人みんな合格をもらい、鑿研ぎや、鋸の使い方まで進んでいるのです。私があきらかに悪いのです。

師匠が、お前はどんくさい

といい、せっかく研いだ刃物をカチン!と割られ、またその欠けを修正しながら、真っ直ぐに研ぐ毎日毎日これです。欠けを削ぎ落とすのもグラインダーなど使わせてもらえるわけもなく…ひたすら全部砥石でします。

刃物の先を砥石にまっすぐ押さえるわけですから指も一緒に研いでしまって、指先は毛細血管が浮き出ていたし指紋も消えそうに。刃物を持つ部分にタコができ爪の間には、研ぎ汁が入るので土日に飲食店でバイトしていた私は、必死で手を洗っていました。

なかなかうまくいかない、心が全部刃物に出る。毎日帰り道に出来ない自分が悔しくて泣いて、なんだか精神修行でした。自転車に乗りながら泣いて泣いて泣いて気持ち悪い女でした。

しかもそればかりやってるわけですから、自分はこの選択で良かったのとか色々思いはじめ…自信がない分ネガティブになるのです。同級生は旅行したり結婚したり、飲みにいったりと遊んでいます。私は結婚どころか飲みに行くお金も時間も無くどんどん疎遠に。

自分の現状が情けなくて、人と会う心のゆとりもなく、技術を身に付けることとのみ考えていました。でも、うまくいかないときってどうしても逃げ場を作ってしまいたくなります。怒られて怒られて一人で部屋に帰る日々、

  • 向いてない!向いてない!
  • どんくさい!

って言われても自分の技術がついてこず、情熱だけでは勝て無いことを痛感し、諦めてカフェの開店をする方向に転換しようかなと揺らいだときもありました。

師匠は相変わらず、刃物をカチンと割っては

やり直し!

という毎日。なんだ。もしかして、最初から私の事拒否していたし、私のことやめさせようと思ってるのか?と思いふてくされて泣いてしまうことも。(テストが100点だったと知らないとき)

そんなこんなで、私はバイトのほうに心をとらわれて土日祝日だけでなく、平日の夕方からも入れるようになりました。生活もかかってるし、なんだかうまくいかないし、家具職人になるってむりじゃない?っていう感じです。

今までなら夜遅くまで研ぎ場にいて修業を重ねていたのに定時で終わってバイトだからってごまかして逃げ始めるのでした…。

すると、ある日から師匠が全く口を聞いてくれなくなりました。無視です無視…。

家具職人への道10~修業は守破離が大事~につづく

編集後記

この怒られた日々で泣いてふさぎ込む夜、逃げたくなる葛藤、言い訳したい衝動、自分の嫌な部分が浮き彫りになりました。やりたいことができて幸せで楽しいはずなのに、いざやってみると自分のだめな部分をこれでもか!っと目の当たりにしました。

今までのような営業は言葉を言い換えたり、謝ったり、褒めたりごまかしたり、パソコン文書やCADなどもデリートキーでやり直しが効くことことでも、自分の手の技術はなんともならないのです…。

家具職人プロフィール

家具職人への道20話

※この話は過去の体験談であり現代に役立てるものではありません。

  1. 家具職人への道1・少女時代の衝撃
  2. 家具職人への道2・就職で東京へ行くもすぐに退職
  3. 家具職人への道3~住宅販売営業マン時代~宅建取得
  4. 家具職人への道4~脱サラして修業へ~
  5. 家具職人への道5~募集も求人もない現実~
  6. 家具職人への道6~オークヴィレッジ(森林たくみ塾)に憧れて~
  7. 家具職人への道7~門前払いの修業への道~
  8. 家具職人への道8~勉強・修業の門が開く~
  9. 家具職人への道9~道具の手入れ漬けの日々~
  10. 家具職人への道10~修業は守破離が大事~
  11. 家具職人への道11~修業の根性鍛え直し~
  12. 家具職人への道12~就職も求人もない!~ただの貧乏な無職に
  13. 家具職人への道13~実現しなきゃただの馬鹿~
  14. 家具職人への道14~木工機械を使うのが怖い!~
  15. 家具職人への道15~就職先が見つかった?!~
  16. 家具職人への道16~木工所にいざ面接~
  17. 家具職人への道17~衝撃の事実~
  18. 家具職人への道18~木工所見習いデビュー体験談~
  19. 家具職人への道19~木工所を辞め木工所に転職繰り返し~
  20. 家具職人への道20~田舎に移住~非常識なタウンページハイジャック

家具職人の田舎移住

  1. 家具職人、田舎移住を目指して木工所で面接
  2. 家具職人の田舎暮らし・仕事も趣味も充実したスローライフの理想と現実
  3. 怒りの家具職人・田舎の国道沿いで手作り野菜販売ならぬ家具の直売始めるぞ
  4. 田舎暮らしで反スローライフ生活・仕事の息抜きはマラソンと漁火
  5. アナログ家具職人が田舎でネットショップ作る
  6. 友達がいない田舎の家具職人にブログ友達が出来た
  7. 家具職人を辞めた日々、木工所の火事と家無し、援農体験
  8. 木工所の倒産と廃屋暮らしで再スタート
  9. 田舎で無職、経験を活かした仕事で失敗を繰り返しながら食い凌ぐ
  10. 田舎暮らしでネット集客のみで家具職人復活の兆しと鬱病予防に断酒
  11. 田舎移住12年過ぎて地域活動の魅力にハマって仕事にする
  12. 田舎移住を受け入れてくれたボスが癌を患う・母の介護始まる
  13. 田舎暮らしで築いた仕事と30代で介護離職の苦悩
  14. 田舎暮らしで築いた仕事と家具職人の仕事を辞めずに人に任せてみる
  15. 家具職人目指した事や田舎移住に後悔してますか?
  16. 都会で暮らすことの苛立ちと人間関係の苦しみをただただ愚痴る
  17. 精神治癒と田舎暮らしに戻るために資格勉強に挑戦する話
  18. 資格と介護を通じて田舎で役立てる住まいの仕事の種火を続ける
  19. オーダー家具の見積もりと製作の直接依頼を辞めている訳
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【番外編】田舎の地域活動の役割を果たせず落ち込む話