家具職人

家具職人の修業を経ていつの間にか実務経験により、木工所に勤めているときに何度か新人指導をする経験もしました。

最初の指導は田舎の木工所で母体は量産工場だったので私がやってきたオーダー家具製作の家具職人の修業というよりは家具工の研修みたいなものです。

量産家具の場合は基本的に使う機械やする仕事が決まっていて、1から全て自分で作るのではなく、工程の一部としてラインに入るというもの。そのため、一人の技術の度量により生産の歯車(リズム)もが狂い、生産量も下がるので誰でもできるわけではないけども、人によっては経験を重ねれば慣れが来て毎日同じことの繰り返しで気分が萎えるという悪い面もあります。

私の場合は工場が忙しいときにたまにヘルプでラインに入ることもあったのですが、そのときに自分との戦いで、いかに早く正確にできるようになるか、周りの流れの足を引っ張らないか、1時間でできる量が昨日より多くなっていることに喜びを感じたりするので必死でしたし、その面白みもありました。

技術を教えることはもちろんのこと、ただパネルを毎日作ってるだけと思うかもしれないけど、このパーツはここの部分で、みんなで作って完成させたものが必要とされるお客様のところに渡って生活の役に立ってるんだよっと。各仕事の楽しさを熱弁する若かりし頃の私…

しかしながら、高卒で就職した研修生に

『そんなに仕事に熱中してアホみたいですね。面白くないですよ仕事って』

などと言われ…

アホみたいって…

特に、私のように、家具職人になりたい!っといった選択型ではなく、どちらかというと、消去法、妥協型で近所の木工所に就職して…という場合にはいくら生産できるかというよりは、早く17時になれば良い、お金稼いで休みに遊ぶと言う感覚なので致し方ないのですが、

それがわからなかった若かりし私は、早朝出勤、一番最後に帰宅、土日も技術向上、とにかく家具を作ることしか考えず没頭し、自分の考えが正しいと思いこんでいました。

社長に『みんな君と同じじゃない、土日は休んで遊んでってしたいものだよ』っと言われるほど私は仕事人間でした。自分の技術に納得行かず不安もあり、どれだけ仕事をしても満たされなかったのです。社長が言うというのはよっぽどだと思います…。

ちなみにその研修生は他にやりたい仕事がみつかりその資格を取るための学校に行くと言って辞めました。うんうん、妥協型より、やりたいことが見つかったなら行動は早いほうがいいよ。私もそうやって転職したり社会人になって勉強したりしたものだ…。(会社にとっては迷惑な話だとは独立した今ならわかりますが)

そしてもう一つ、別件の指導の話。

『家具職人の仕事に慣れましたか?楽しいですか?』

と家具職人見習い中の人に休憩の談話がてらメンタル部分の様子伺いも兼ねて聞くと

『仕事に楽しいとか面白いなんてあるんですか?』

と真顔で言われショックを受けました…

私の接し方が悪いからかしら…。

新人指導って何回しても人それぞれで受け止め方が違うし、とても神経使うし、うまくできない頃の苦悩を乗り越えるべく楽しみを見出しながら失敗を繰り返しても独り立ちできるように技術を身に着けてほしいなあっという願望があり試行錯誤を繰り返しています。はじまりは妥協型であってもそこからなにか見出してもらえると嬉しいなと思うこともあり…。

私は仕事は楽しんでしているし、家具職人以外でもとにかく楽しんだり、向上心を持って成長が見えたときに達成感や面白さを感じながら働いてきているので考えたこともない言葉、そう『仕事に楽しいとか面白いとかあるんですか』、を言われて結構凹んでしまいました。

仕事は楽しいものだという私の視野の狭さや思い込みを突きつけられたのです。そう、仕事が楽しくない人の気持ちの理解に乏しいのです。

楽しいという表現が間違いなのかな…。

  • ん?言い方が悪かった?私の日本語が悪かったのかも?
  • 楽しいとか面白いというのは遊びの感想で使う言葉あり、仕事は遊びではないから楽しいとか面白いという発想は間違えであり、真面目に取り組んでいないと思っているのかも?
  • 家具作りの仕事にやりがいがありますか?達成感はありますか?のほうが適した言葉なのかも?
  • それとも…言葉通り、家具を作る仕事自体に全く魅力を感じていなくて興味もないのかな?

いろいろ考えたけど、引きこもり生活が長く、40歳越えて初めて就職をし働く自体の経験が無いということや、彼も上記に書いた彼と同じく、消去法の妥協型で仕事をしているので仕事に情熱や楽しみを持たない価値観なのかもしれないです。

人それぞれなのでどれが間違っている、正しいとかは無いし、仕事に重きをおかず、趣味や他の娯楽をして過ごしたい人もいますが、私の価値観ではやはり、一日に多くの時間を過ごし、それが長く続くライフスタイルであれば、職種関係なく、仕事の中に楽しみとか興味を持ってやりがいを感じながら過ごしたいと思うのです。

自分自身、家具を作る仕事をしたいと家具職人になるには?と奮闘して今がありその間は喜怒哀楽あれど充実していました。そして、介護で仕事ができなくなる未来に憂う経験を経て希死念慮に襲われ相当なうつ状態でありましたが、できることから復活をし、本当にこの家具を作る仕事をできることが楽しいし、何より心も落ち着くし、やりがいを感じることができます。

仕事に対する取り組み方や思い入れって形として表れたり、相手に見えない思いが伝わったりするので、やりがいや満足感、達成感、向上心に繋がり、逆に、仕事をいい加減にしていると負の連鎖がやってきて更に楽しくなくなるものだとも思います。

とにかく、仕事一生懸命してアホだとか、社畜だとか、ワーキングプアーなど言われてきました。たしかに傍から見たらそうかも知れないですが、自分自身は没頭したいし夢中になる良い時間を過ごしているし良いお客様とお仕事をすることができて精神的にも健全さを保てています。

自社直売のネットショップの構築をしているときには家具職人ではない自分が心底ストレスで毎日イヤダイヤダと言っていましたが、職人仲間のため、木工所の未来のため必要な仕事だと思うことで乗り越えれましたし、それが故に独立してスキルが役立っていて…。当時の社長にはストレスで八つ当たりしたりしていましたが今は本当に感謝しています。

ちなみに、観光登山ガイドや農業のお仕事もとても楽しくしていますし、野菜に関しては成長が励み、ガイドに関してはお客様が楽しんでくれたり驚いてくれたり真剣に聞いてくださったりしているのを観ると癒やされるのです。

もちろん知識不足、技術不足で勉強することはたくさんあり、まだまだしたいこともたくさんある未熟な自分ですから家具のお仕事を筆頭にもっと精進します。

人それぞれ夢中になれるもの、心落ち着くこと、必要とされることは違います。無理なく、そして心が病まない環境で過ごすことができるといいですね。