家具職人の将来性を考える

家具業界は衰退している、家具職人は儲からない、インテリア業界は不景気だ…っというのは家具職人になりたいと思った20年以上前から言われています。その間、実際に倒産した木工所(私も経験あり)、事業拡大したインテリア販売業、有名な家具作家さん、ずっと忙しい木工所、独立したけど仕事がないなど本当にいろんな事例がありますので将来性というのは自分の立ち位置や在り方により左右されると思います。そして何より自分の身体が悪くなったり身内に何かが起こることで今までの道が進めないこともあります。

家具職人になりたいと修業の道に進んだのが20代前半、あれから約20年経過して経験したからこその当時の視野とは違う将来性に対する考え方が生まれてきました。今回の話は若い方は流し読みで構いません。なぜなら未経験で若い自分の成長に注力している気持ちにブレーキをかけてしまう恐れもあるからです。

何より私も若いときに年配の方の言っていることや姿が自分に当てはまるなんて思いもよらず我が道を貫いてきて自分で失敗を経験して乗り越えと繰り返し結果的にその時間が良い経験だったからです。

家具職人初心者の頃の目線

家具職人にあこがれすぎたので自分がその道に進む入り口に立てたときにはすべてのことに劣等感で焦燥感も強く早く一人前になりたいととにかくどんなことでも吸収しようと必死でした。お前は家具職人に向いていない向いていないといわれて怒られながら何が向いていないのかもわからず向いていないなら向いているようになろうととにかく没頭する日々。

簡単に言うとがむしゃらでした。例えば継ぎ手を作る時に、人はすぐ習得できることも私は30回してやっとこさ形になるなんてこともざらでとにかく技術を習得して木工所に就職したらしたで先輩や会社の迷惑にならないよう、日当以上の仕事ができるように早くならねばと周りの素晴らしい職人さんたちの技術に圧倒されながらへこむ日々。

手取り足取り教えてもらう環境ではないので常に試行錯誤と目で盗む日々、自分が一番下っ端だから先人たちのことが正解で誰がどうとか分別もなくすべての人に尊敬の念を持っていました。私の場合は転職も繰り返しているため一つの会社でコツコツしている人よりも様々な職人さんに出会う確率が高い方だったと思うのですが今思うと会社や工房、人により全く違う技術や在り方になるなあっと感じています。

狭い中にいると間違いや正解に気が付かない

家具職人としてのスキルはここの性格や性分もですが、会社の在り方にも左右されます。自分自身が丁寧にしたくても会社がそれを求めず早く仕上げることを目的としている場合には見えないところは手を抜くというスキルが身に付きますし、時間をかけてでも丁寧に仕上げることを大事にしている場合には時給に換算した場合に利益も少なく、世の中のスピードや需要に合わせた経験や対応ができません。

そしてそれがどちらが正しいかというのはありません。ずっとその中にいるとそれが正解なのでそのまま進んでいけば問題が起こらないからです。正直言うと私は丁寧に丁寧に丁寧に仕事をするところにいたため、たまの手伝いで仕上げ面が雑でも早く仕上げることが大事だという環境に当たると相当なストレスを感じてしまいます。こんなのでいいの?と思う仕上げでもOKなことが目の前で起きているときにその現状が受け止められずこんなのでは自分の技術も精神も落ちぶれてしまうと思い悩むほどでしたが、早く納めることをモットーにしているところからすると逆に丁寧にする人に対してイライラしているという現実もあるのです。

で、どちらの考え方でも現実的に成り立っていると別に間違いでもなくて問題や不正解が起きるのはその環境から抜け出すときや、会社自体が今までのやり方が通用しなくなって変化を要する時。

将来的に経営者になるのか職人として生き続けるのか?先人のような生き方がしたいのか?その価値観は本当に自分の精神を健康にしてくれる環境なのか?狭い中にいると気が付かず、意に反していることも慣れ合いになっていることもあり、年を重ねるごとに変化に対応する気力が持てずそこから抜け出すことも億劫になってしまうことには注意です。

家具職人の将来性は自分で見出すこと

雇われているということはそこの会社の方針に従いそれに応えたことの対価が給料なので我を貫きたければ失礼承知で最後まで責任をもって企業改善を担うか、独立したり自分の方針に合ったところに転職する必要があります。そう考えても現実的に行動していくのにある程度のスキルや情熱、説得力も持ち合わせないといけません。

もし、家具職人の将来性を考えるのであれば自分が今後どの位置でどのような仕事をしてどんな技量が自分にあるかを把握することと、そこに市場があるかの調査やこのままでいいのかという客観視をする時間も必要です。ただ、修業の身でこういうことまで考え始めると技術習得にも精神的な障壁ができ未経験のまま頭でっかちになりどっちつかずのまま理想を述べるだけになり結果、口先だけになってしまうことが危惧されます。(なので最初に読み流してくださいと記載しました)

未来の正解は自分が決めます。家具職人でも仕事内容はたくさんあり、仕事内容が同じでも会社によって全く違います。付き合う人により未来が変わるように付き合う仕事により未来も変わります。そしてその未来が自分の望んだ形かどうかというのは他人には決められませんので自分で決断していく必要があります。

他人から見て大変なことでも自分は苦じゃないこともあるし、人が当たり前にできることが自分では苦痛の時もあります。私からも人に対してこれが正解だと導くことはしませんし、身内にも押しつけはしないようにしています。

人の失敗談や成功談、生き方はあくまでも参考に、将来性の有無を決めるのは自分。選んだ道にどうやって自分の役割や価値を見出しそれで生計を立てていくかですね。

個人的には先人の言葉や在り方から学んだことは、年を重ねてからの心身の変化に基づく仕事能力の変化。今後自分の理想像は持ちつつも予想できなかった心身の変化に対するリスクを考えて将来性をアップデートしているところです。その話はまた。