家具職人体験談7.聴覚障害・障害者支援施設と木工作業をする

家具職人として働き始め、複数の木工所に転職してきましたが、その中でキッチン製作をメインとする木工所にて聴覚障がいを持つ方が2名働いていました。愛媛の聾学校の木工科で学び就職で大阪に出てきたと聞いた記憶があります。木工機械も普通に使えますし、私は公式な手話はできませんが彼らが会話を読み解くことが有能なのでボディーランゲージで何となく会話が成り立っていました。

その後、田舎に移住してからの木工所では聴覚障がい(3-4名)、知的障がい、発達障がいの方が複数働いていて外注先には福祉作業所などがあり私は別注家具部門でしたが毎日皆さんと携わって仕事をしていました。この会社では量産家具がメインだったため寸法などは変われど同じ作業の繰り返しの日々なので適材適所で能力を発揮しているので私が一人でしている仕事のヘルプが必要な際に適任者がいてとても頼りがいがありました。

自閉スペクトラム症の彼は数字を覚えることがすごく得意で一度切った寸法は忘れないので切り間違えがないという強みを持っていたのでパネルソーがメインでした。雑談でも数字を得意とするので誕生日だけではなく車のナンバー、私が面接に来た日、何気なく話した姪っ子の誕生日などばっちり記憶しています。また宇宙や原始時代の話が好きで何度も同じ繰り返しになりますが着眼点が面白く新たな発見もあり一緒に過ごしたりしました。

発達障がいでも様々な特性があり、一方的にずっと話をしてコミュニケーションを取ることが難しい人もいましたがその人はダブルソー(サイザー)のカット担当で、そのカットしたパーツを受け取る、いわゆるペアになる人が会話が聞こえても話せない特性を持つ方だったのでバランスが良く仕事が流れていました。会社が長く様々な人を雇用してきた経験の配置だったんだと今なら思います。

ろう学校から来た人はNC旋盤をメインにしている人と仮組や検品部門、そして梱包部門、とそれぞれの場所で活躍していたし、はじめに驚いたのが車の運転を自分でしていることです。またマラソン大会で一緒になったりして、一緒に働く機会がない頃は失礼ながら聴覚がない人はとても不便でつらいだろうなと思っていたのですが聴覚ではないところの感覚を生かして日常生活や仕事をしていくのは彼らには当たり前のことであり私が思う以上に特別なことではないのだと知り(もちろん聞こえない分、他の神経は使っているし注意力が高いと思いますが)フラットに付き合うことをしています。

また、今も介護の合間に聴覚障がいを持つ人と時折仕事をしていて指文字や手話を教えてもらいつつも結局はボディーランゲージになっています。木工作業で必要なことをコミュニケーションを取りながら仕事をするので洞察力が高いため大体通じるものがありますので言葉が必ずしも必要とは限りません。休憩時間は冗談や雑談をお話ししていますし中には運転免許がある人もいるので車で駅まで送ってもらうこともあります。

別注家具の製作をする人も定年を越えるまでいたのですが木工機械や電動工具をガンガン使うことができます。私は耳で機械の異音や調子、切れ味などを判断する部分を目と振動で把握しているのかな?と体感しようと耳栓をして試みましたが私はやはり聞こえないとケガをしそうで怖いと思ってしまいますので違う注意点で使いこなしているのだろうと想定しています。

先日は指文字のテキストプリントをくれたので自分の名前だけは覚えましたがなかなか覚えきれない状態…そして、今度は手話の辞典と大阪の手話というテキストを貸してくれました。


すぐに使える手話パーフェクト辞典 [ 米内山明宏 ]

手話辞典

この大阪の手話というテキストは大阪の地名の手話が記載されていて覚えやすいなと感じました。自分も将来的に手話が必要な環境になることがあった際に慌てないように少しづつ覚えていこうと思います。

木工を始めてから様々な方と出会い、福祉に関する意識や知識が高まりつつ、当たり前の環境にもなっていて世間では支援と言いますが入り口がきちんとあってそこで経験を積むとフラットであり、逆に持続力があるので能力が高い人の割合が多く、その能力や人柄で自分自身が彼らに助けられることが何度もありました。ただADHDに関しては人によって違う部分もあり、わからないことも多く伝わらないことや嚙み合わないことに何度も悩み、発達障がいの人がどのような行動や思考なのかなどを学んで理解を深めたり、今はYouTubeでも情報収集できるので、あの行動はこういうことか!と今更気が付いたりすることも多くあります。

以前共に働いてきた社長の遺志を継いでいるので私が田舎に戻って(現在介護中の為)一度リセットした基盤を立て直し、仕事内容は家具には限りませんが人を雇えるようになった暁に積極的に雇用でき、私自身が助けられながらも本人が手に職をつけ、就職や独立に有利な知識や経験を積み重ねるサポートをすることができればと考えています。もうどこの学校に行ってどのような求人をするかなど妄想済みですのでそれを現実にできる自分を目指さないといけません。